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2005.09.01

asahi.com: 燃料電池と自然エネルギー?-?経済気象台 - ビジネス

リンク: asahi.com: 燃料電池と自然エネルギー経済気象台 - ビジネス.

2005年08月31日14時32分 技術者は、自己の開発結果の長所ばかりに目を奪われてはいないだろうか。  例えば、燃料電池に代表される水素エネルギーは、環境にやさしく、将来は巨大な市場を生み出す、と期待されている。  燃料電池は、水素と酸素と化学反応させて電気を生み出す。副生成物は水と熱だけで、二酸化炭素や排ガスが出ないクリーンエネルギーとして注目されてきた。トヨタ自動車やホンダが開発した燃料電池車は、大量生産や市販の前提となる型式認証を受けた。燃料電池車は、水素を燃料として、排出するのは水だけで「究極のエコカー」とも呼ばれる。  一方、燃料電池を家庭に一方、燃料電池を家庭に普及させる動きも本格化している。家庭用に利用すると、電気と温水が得られ、光熱費も節約できるという。試験的な導入も始まっている。

 問題なのは、水素を得る方法だ。天然ガスの主成分、メタンガスを水と反応させて、水素と二酸化炭素とに分解する方法が主流だが、二酸化炭素が発生してしまう。 (注1)

 炭素を含んでいない水を電気分解すれば水素が得られるが、ここで問題になるのは分解のための電力だ。そこで、石油や石炭を燃料料とする火力発電ではなく、風力発電や太陽光発電など自然エネルギーを活用してはどうか。(注2)  

風力発電は風の強さによって発電量が大きく左右され安定しない。発電規模では火力にはとてもかなわない。しかし、水の電気分解ならこの短所を補って余りある。

 太陽光発電だって同様の使い方ができるだろう。現に、このような方法を検討している動きもあると聞く。

 発電という行為だけから考えれば、確かに燃料電池は素晴らしい。肝心なのは、燃料の生成方法や副産物をどう環境負荷の少ないものにするかだ。

 燃料電池は自然エネルギーの組み合わせてこそ、本当のクリーンエネルギーとなる。(隠居)

というけどこりゃひどく科学を無視した話だ。
その理論的背景も提言もずいぶんおかしい。

燃料電池はその燃料たる水素の製造時に二酸化炭素を発生する。これは正しい。
ただし、
注1のような部分的な見方は全体像をゆがめてしまう。
燃料電池は発電までの全体において化石燃料を燃やすよりも公害物質の発生量が少ないのだ。あるいは「害」が面的ではなく集約的であって従来よりもいくらか対策がしやすいのだ。

ヒステリックに「完全に無くせ」というならそういう議論に焦点を当てなければならないし、量の完全さを最優先する意味を示さなければならない。
それに燃料電池に限らずプロセス全体で全く二酸化炭素を出さない完全クリーンエネルギーは存在しない。太陽電池だって風力発電機だって製造時には電力を用い二酸化炭素を発生させているのだ。だから、そもそも今までの技術者の公言やマスコミと市民の捉え方が間違っていたということを強調すべきでは?

燃料電池は
○天然ガスを燃やすよりも(プロセス全体ではおそらく)省エネ・高効率なこと
○移動する自動車などでは環境中に有害物質をばらまかないで済むこと
○数少ない電力貯蔵の方法
として価値がある。
電気なんてものはそもそも”需給同時性”にしばられているしこれが厄介なのだから、燃料電池による電気の「保管可能性」の方を重視したいな。

また、注2の提言もずいぶんおかしい。
太陽電池や自然エネルギーで得られた貴重な電気エネルギーを水の電気分解などに投入して水を酸素と水素にしていたら、次にここから取り出せる電気エネルギーは初めよりも少なくなってしまう。つまりこの余分なプロセスは損失だらけ。

エネルギーを得るためにはそのために少なくないエネルギー投入を必要とする。
太陽電池を作るのも風力発電を建設するのも、本来はお金の元を取るためじゃなくてその製造に要するエネルギーよりも多くのエネルギーを得るためなのだ。
つまりエネルギーを得るということはエビで鯛を釣るということ。
だから釣った鯛で再び小エビを釣るなどということをしてはならない。
この間を元通りだという人は居ない。
船を出し人が釣っている(エネルギー消費している)のだから。
こうしてエネルギーを得る過程ではほぼ全ての場合、直接的間接的に二酸化炭素発生を伴う。

なにしろ太陽光や風力は元から効率が悪い。
だから、ここから得られた電力はとても貴重。
変換する必要が無ければ無駄なくそのまま使うことを勧めるべき。

考え方を押し進めてゆくと目の前の二酸化炭素発生量削減が優先なのか全体での二酸化炭素発生量削減とエネルギー保全が優先なのかという話になる。しかし後者の方に分があるのは明らか。
エネルギーがあれば二酸化炭素を回収し他の物質の形に閉じ込めることも不可能ではない。
核エネルギーを取り出さない限り物質は不滅なのだから。
だから我々はエネルギーの方こそ大事にしなくちゃならない。

自然エネルギーによる発電はそこから得られる電気エネルギーをそのまま使い、燃料電池は燃料電池のメリットを生かすのが一番賢い使い方。
もし太陽電池で水素を得るなら、電気を貯蔵するという目的でしょう。
そういうことならわかるけどねぇ。

もし燃料電池を活用するためにこの間の「エネルギーの目減り」に目をつぶれと言うならば、初めからこの「目減り分」を使ってしまった方がCO2ペイバックにおいてもエネルギーペイバックにおいてもコスト的にも、全ての点で”お得”。

だからアサヒコムの論は燃料電池の自己目的化以外の何者でもない。誤っている。
エネルギーの保管が主目的で無い限り、太陽光発電で得た電力を電気分解に用いるなんて馬鹿なことをしちゃならないヨ。それに日中の電力はまだまだ貴重なのだ。

私の提言はこう。

今後、水素を得るための電気分解の効率と水素の保管性が良くなることがあれば、夜間の原発の余剰電力で水素の形にして貯蔵するのも良いかも。
余分が無い日中の太陽光の電力はそのまま使いましょう。

9月 1, 2005 太陽光発電のニュース |

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コメント

よしどみさん、こんばんわ。
海上で大規模な太陽光や風力発電設置し、海水を電気分解してタンカーで水素を運ぶ構想を提案した学者、またそれに食いついた国や商社がいるようですが、よしどみさんの爪の垢でも煎じて飲んでほしいと思います。

「保管可能性」については、現状でも電力会社が原発とセットで大規模揚水発電所を造っています。
原発の高効率運転と、ピークカットに大変貢献しています。

メタンガス利用の電力を、IHや電気温水器の熱機器に消費するのは愚の骨頂、メタンガスのまま利用したほうが熱効率がいいし保存性もいいですから。

特に自然エネルギーの1KWhの重みを知れば、デロンギヒーターを使うこと自体に罪悪感を感じるのが共通の認識となる日が1日も早く来ることを願っています。

投稿: aosam | 2005/09/01 23:28:36

aosamさん、こんばんは。

海上で発電してタンカーで水素輸送ですか。
なんともトンチンカンな取り組みがあるものですね。
まだまだ効率のよい設置場所としての屋根があるのですから太陽光なんぞは洋上でやることは無いでしょう。海上や沿海のPVはアルベドによって発電効率は良いって言いますけど、塩対策で重装備化するとそのぶんライフサイクルでのエネルギーペイバックも悪くなると想像します。
まして形を変えて燃料使って輸送などしていたらせっかく得たエネルギーの総体は目減りするばかり。
水素も港に戻るまでにだいぶ気中放散してしまうのでは?

来るべき水素社会への夢を語るのは悪くないと思います。
でもエネルギー収支的に無価値な試みはほめられたことじゃありません。
それこそ「地球に優しくない」です。
おかしな試みが大真面目に取り組まれるのはいかに近視眼的な学者が増えているかということでは無いでしょうか。
「学」ってのは、本来は幸福を追求する手段だったでしょう。
眼前の成果ばかりを求めて「学」が自己目的化しちゃうとこうなっちゃう。

揚水という位置エネルギーでの電力貯蔵、保管は今ある数少ない技術ですよね。
もちろんこれは自然環境保全のためには責められるべき点があります。
でも、燃料電池その他の電力貯蔵がなかなかうまくいかないから、短期的にはこの方法しかないということにも我々需要家は気づくべきでしょう。

また、技術開発に期待するといっても、短中期的な視点を欠いていては目の前が困ると思います。
万事、ありうる話をしないと意味がありません。
さもなくば省エネ策を急進化し、暗い部屋でひざを抱えて過ごすしか無いはず。

IHは殆どの意味で環境には好ましくないですね。
エネルギー論からすれば、どう考えてもプロセス全体でロスが多い。
いくらIH本体を高効率化したって途中が良くないぶん省エネではない。
CO2もその発生の場所が違うだけだし、あんなに多種の電子部品や素材が入ってるからゴミ問題だってある。
電気屋がガス屋を擁護するのも変ですが、ガス台はほぼその全体がリサイクル出来るのに対して複合材料で出来ているIHはゴミ問題でもまずい面が多いですね。(いまどきのガラストップのガス台はちょっと苦労がありそうですが)
でもIHが欲しい人は欲しいで良いと思います。
エプロンを燃やし驚きあわてた経験を持つ人や注意力が低下してきたご老人には良いプレゼントになっていると思います。
いずれにせよ、業者やメーカーは台所環境と地球環境は別物だということをお客さんに説明する必要があると思います。

電気温水器やデロンギもねぇ。。。ジュール熱ですから勿体無いですね。
熱から電気を得てまた熱にするなんざ、無駄のカタマリです。
ヒートポンプとはプロセス全体がまるで違う。
深夜電力だからガスよりも光熱費は安くなりますけど、これらの機器を使う場合、原発を認める必要があるでしょうね。
でも電気温水器の長寿命性はなんだか捨てがたい魅力を持っています。
ライフサイクル全体での、効果対投下エネルギー総量がどうなるかというと、ダメ子ちゃんだと思いますけど。

何にせよ、モノを買うにはきちんと定量評価しないとならん時期に来ています。
一方で、コスト面を鑑み、譲れるラインを考えることも必要でしょう。
厳しい自己犠牲ばかりを強要する環境論はとても浸透しないからです。
太陽光、エコキュートと来たら、IHを入れてオール電化にして光熱費を安く。
こうしたお客さんのお気持ちはわからないではありませんし、ひとつのスタート地点とも見なせるからです。

投稿: よしどみ | 2005/09/02 3:02:22

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