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2006.02.07

太陽電池の劣化について

太陽光発電システムの総合性能を一口に語るのは難しい。
太陽光発電システムは、太陽電池そのものの作りやパワコンの電気回路、そして設置状態など様々な要因がからみあって、実稼動成績に現れるからだ。

例えば、日影。
これは電気とは畑違いの人にもある程度、その影響の想像が付くかもしれない。
一方、その度合いについては、太陽電池の内部が分かっていないとなかなか評価しきれない。しかし、これはかなりの精度で3次元日影解析シミュレーターで計算できる。

これより影響が大きいのが、南面への集中度。
複数面設置の場合、なるべく南面、次に日射の良い面といった優先順位に沿って大きな設備規模が投入されるのが良い。南面に2KW、東に1KW、西に0.5KWという合計3.5KWシステムよりも、南面に3.5KWが集中配置できればこれに越したことは無い。
現在実用的なシミュレーターでは、日射量からこれを予測するが、面によって温度ドリフトが異なる太陽電池セルの挙動とMPPバラつきを考慮すると、複数面設置では、シミュレーター値より必ず実発電量は小さくなる。IVカーブが段つきになり、うっかりするとMPPトラッキングするマイコンの挙動が暴れるからだ。

このことからすると、住宅では三洋のHITに代表されるような「面積効率」はやや高コストでも捨てがたい魅力を持つ。実発電量対コストからすると”安い”場合があるからだ。

しかしどのメーカーのどの製品が良いといっても、耐久性あってこそ。
例えば、アモルファスは住宅市場では悪名が高い。
発電量の劣化が知られている。
(リクツは長いので省略するけど)素子の能力が少しずつ落ちてしまうのだ。
だが、これも「程度の問題」ではないか?
また評価の方法にもよる。JISで規定する評価方法ではアモルファスや何によっても規定できないHIT等のハイブリッド太陽電池はかなり設備規模Wが小さく規定される。
つまり実際の太陽電池の方がはるかに発電するということ。
以前キャノンのアモルファス太陽電池を見て驚いた。
設置してだいぶ経っていたが、見学した時期には到底考えられないような定格超えをしていた。つまり実発電量は、劣化云々を超えるほどになっているかもしれないのだ。

そうそう。劣化を言い出したら、一般結晶系は全て、「無出力」という恐ろしい事態になる場合がある。(劣化度100%)
太陽電池モジュールの中身を見ると、セルから電極を引き出して電力を取り出しているわけだが、セルといういわば石にハンダ付けしてあるわけだし、屋根上という極端なヒートサイクルにさらされる場所ではハンダが外れてしまってもおかしくない。
かつて設備用のポッティング太陽電池でこうした事故が良く見られた。
やはりセルと電極の間は、信頼性のボトルネックと言える。

それにしても、商売仇を叩くための言葉が独り歩きしてしまうのは大問題だ。
非常に問題の多い製品やシステムもあるが、部分を凝視すると全体を見失う。
お互いに気をつけねばならない。

そもそも、どんな高級自動車だって劣化する。
動き磨り減るものの例えがまずければ、外壁だって瓦だって良いだろう。
あんなにピカピカして頑丈そうなものでも、少しずつひび割れあるいは粉を吹き、痛んでくる。この当たり前のことに思いが及ばないと無駄に神経を尖らせることになる。
だから現在技術でやれるだけのことをするのが一番、私はそう考える。

2月 7, 2006 太陽光発電の技術 |

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コメント

こんばんわ~。

「マイコンの挙動が暴れる」~パワコンのプログラムが主に1方向用を中心に想定されているため(汎用性を高めるためには仕方ないことですが)、3方向や季節的に日影が出来る場合をあまり想定していないように感じます。

実際に我が家でも2アレイの内、1方が部分的に雪に覆われていると、そちらの出力を無視して、健全な方のみから出力を得たほうが効率的なのに、電圧の低い方に合わせてしまいます、その後、雪がなくなっても、1時間程度MPPを探りません。

地域性や2~3方向、日影等の状況はさまざまですから、それにあわせたプログラムや設定を出来るような機種があれば良いと思います。
だれが、プログラムの書き換えや設定をやるのか、又は、責任問題等の課題はあるかと思われますが、、、、。

投稿: aosam | 2006/02/08 20:36:49

aosamさん、こんばんは。

具体例をありがとうございます。
全自動ですと、なかなかうまくはいかないようですね。少々面倒でもインストール時に弄れる余地が欲しいものです。

そういえば、ブルースカイチャーコンは手動で弄れますね。
MPPTの範囲が広いほど挙動はノロノロするはずですから、ディップスイッチで範囲を選べるようなパワコンがあっても良いのかもしれません。(そういえば、数年前まではありました。めんどくさかったなぁ。。。汗)

投稿: よしどみ | 2006/02/08 21:30:50

よしどみさん、aosamさん、こんばんは、

いきなりソーラーカーの話になりますが、ソーラーカーではアナログ制御のMPPTが多chで採用されているようです。(非常に高価だが競技と研究目的なので効果が高いと言う理由で盛んに採用されている模様)

私が勝手に考える多chアナログMPPTの理由
①車の上と言う形状が一定で無い架台の上にフレキシブルなアモルファスモジュール等を細かいアレイに分けて設置しているから。

①車は方向転換するので日射条件が常に変動しっぱなしだから。

②勾配や加速減速に伴うアクセルワークで負荷も常に変動するから。

等がアナログMPPT充電回路を多ch化する必然性として考えられますが、住宅用でも寄棟屋根や入母屋等設置面をどうしても分割しなければある程度の容量が乗らない場合に関しては確かに悩みの種でしょうね。

【住宅では三洋のHITに代表されるような「面積効率」はやや高コストでも捨てがたい魅力を持つ。】

確かにそう思いますね。パワコンをアレイ毎につけてたらどえらく高くつきますね。

独立型なら、単純にアレイ毎にMPPTチャーコンを個別に設置すればある程度アレイ間の温度ドリフトによる制御の暴走は緩和出来るのではないかと思います。

最近HIT信者になりつつあるすぎやまでした。

投稿: すぎやま | 2006/02/09 1:25:15

すぎやまさん、こんばんは。
独立型とMPPTは、パネルを増やすという逃げ道があるからまだ、何とかなりそうな気がします。しかし車両に搭載するとか、狭いところに据えるシーンを想定するとそうでもないか。
(自分で言って自分で否定。。。)
ともあれ、住宅系統連系は工場の屋根などと違って狭くて狭くて。。。やっぱり面積効率が無いと、どうにもならんのです。

投稿: よしどみ | 2006/02/10 0:15:27

初めまして、インドのチェンナイで技術移転・マーケティング・コンサルティングビジネスを営む山中康寛と申します。

現在、インドへと太陽電池を輸出するビジネスを検討しているのですが、大変参考になりました。

今後ともよろしくお願い致します。

投稿: インド技術移転ビジネス | 2011/06/07 20:10:38


山中さん

韓国台湾を除くアジア諸国は、独立型需要でしょうね。当分はワンモジュール~数モジュール規模でしょう。すると上に書いたような、設置場所の有効活用の考え方、そして施工性・BOS調達性が大事になってきます。

ただし、規模が一定以上大きくなると話が違ってきます。ユーザーに取っては、蓄電池のイニシャルコストが痛くなるのです。技術者都合から、設計定数=技術論をユーザーにゴリ押し(必要な蓄電池容量を推奨)するのは現実論として無理です。そこで蓄電池容量を小さくする必要が出てきます。ただし設計を大きく曲げるとすぐに不稼働となります。これは日本で大量にみてきたとおりです。

ならば、実効容量を上げるべきです。大した魔法ではありません。PWM充電を例に取ります。南面単独設置では蓄電池側が追いつかず投げ捨てあるいはVoc動作が出てきます。これは実は容量の問題ばかりではなく蓄電池の持つ化学的時定数の問題が背景にあります。そこで、蓄電池の充電時定数(化学反応に時間がかかる)を考慮し、多面設置とするのです。
モジュールはある程度長持ちしますが、蓄電池には寿命があるからです。そしてそのことがランニングコストを決めてしまうからです。
そこで、戦略的にこのような設計をするのです。これがユーザーを益することにもつながります。
数モジュールを超えるとこのような大きなスコープが欠かせないことでしょう。
また、このようなスコープが昼間利用(高効率利用)を促します。

投稿: よしどみ | 2011/06/08 1:16:10

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