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2008.03.25

もっと精密な議論を

日本の太陽光発電の売れ行きが落ちています。
フィードインタリフや補助金といったインセンティブ不足を理由にユーザー側の事情ばかりが取り沙汰されますが、これはあまりにも浅い見方です。

今、プッシュ型であれプル型であれ、熱心に顧客の元に通い販売し、設置する業者がどんどん減っています。
業者をやっている人には、その理由ははっきりしています。

食えないから事業を続けられない。

引き金は色々とありましょう。
すぐに思い当たるのは、建築基準法改正による新築の停滞。それから特商法改正による訪問販売事業者の撤退。

しかしですね、偉そうにのたまう僕もたった18年しかやってませんが、過去を思い起こすと、その程度で業界が弱体化するとは思えない。
太陽光発電と言うのは、どこか宗教性があって、儲かろうが儲かるまいがやりたいからやる、という人たちによって支えられてきたように見えます。
日本にFITほどの強力な武器が無くともまぁまぁに普及してきたのは、ユーザーの環境意識が高いからといった分かったような分からないような説明が行政や学界関係者によってされてきましたが、業者のほうも似たような感じです。だからか、年収200万だか300万みたいなのしょぼしょぼ収入の、はっきり言ってしまえばビジネス劣等生なんですが、そんな状況でも熱心に取組む業者がたくさんあったのです。

でも国策はなおもプライスばかりに心血を注ぐものですからあぁ、もっと厳しい生活をしなくちゃならない。とばかりさすがに皆んな、嫌になっちゃうんですね。本当に食えなくなっちゃう。乾いた雑巾絞りにも限度がある。
そんな感じでこの数年、多くの同業者が去ってゆきました。

私のところはまぁ、良く知られたあの住宅系統連系みたいなの以外に、独立型だとか、開発だとか、製作だとか変なことばっかりやっているので食ってゆく方法はあるんですけど、PVはビジネスになりまっせ!とばかり業界の実情も知らぬままメーカーに引きずり込まれた新規参入者たちにはたまりません。

ぼんやりとやっていたら続かないよ。ビジネスを続けるためには、ああせい、こうせい、とか説教臭いことを言いたいんじゃありません。
私が心配しているのは、これから参入される人たちのことです。
そして、事業者に新規雇用の原資が無くて若い人が来なくなるので、技術の空白世代が出来てしまう可能性です。
そしてそれが国益を損なう可能性です。

技術の空白世代が出来てしまうと、最先端である現場に何が起こるか。
何でもわかっているが屋根に上れないジイさんと、体は良く動くが何もわかっていないアンチャンが現場を支えてゆくことになります。これでは内容が到底おぼつかなくなる。

せっかくですから、品質の背景にあるものに言及しますとね、実は、わが国の場合、非常にやばい。
行政や学界関係者は施工品質、施工品質の低下なんて言葉を使います。

だけどこれは、設計をし、現場をこなし、実情をみてゆくとわかってくるんですが、ちょいと的外れな表現なんです。
職人はそうそう皆さんが思うほどいい加減ではありません。元が大工であれ電気屋であれ、鍛冶屋であれ、彼らにはその世界での下積み経験っていうものがあってちゃんと手も動くし、設計に基づく作業くらいは出来るんです。もちろん、人間のやることですから全部が完璧とはいかないですし、モラルの低い職人が荒っぽい仕事をしてたりもしますが、これまで報告されているような事故の本質的背景を辿ってゆくと、職人に原因があるものは、実は、非常に少ない。我々は職能ってものをそんなに簡単に馬鹿にしちゃいけないんです。

で、何が原因かって追いかけてゆくと、大抵は、設計なんです。
設計と施工は併記されることが多いんですけど、絶対にごちゃまぜにしてはなりません。
とにかく、最低限の設計がなされなくなっている。例えば、太陽電池アレイが風で飛ばないようにするとか、逆潮流の計算だとか、蓄電池DODの見通しだとか、そういうのが出来る人が本当に少ない。

こういうきちっとした話をしなくちゃならない時に、「当社のスタッフは経験豊かな職人がどうのこうの、だから大丈夫」とキャンペーン用語みたいなのや、有名メーカーの暖簾でお客さんを煙に巻く人もありますが、勘違いも甚だしい。メーカーが設計したり屋根に上って工事するわけじゃないんです。材木屋が住宅性能を保証しますかね?暖簾の使い方も、こりゃ、怪しからん。

風とか地震とか雪と言った、自然がもたらす外力は、人間の寿命期間では経験しきれる筈も無いことに思い及ぶべきです。自然ってヤツは、時間軸スケールも、量のスケールも、一個人の経験や寿命よりもうんと大きいんです。だから過去の統計があって、工学ってのが法律の形で整理した技術体系がある。
まぁ、計算でダメなものは、実際もダメです。今まで大丈夫だったからというのも大きな勘違い。運が良いか悪いかの違いだけでしょう。ちゃんと机に向かい、設計しなくちゃだめだってことです。少なくとも、外に面しているものは皆自然の影響下にあるのですから太陽電池を筆箱の中のボールペンみたいな静的なものと見なしては、全然甘いわけです。

また、「住宅だから・・・」と安い仕事を何かと軽微にみなしたがる人があるので忠告しますが、住宅は屋根材が飛散しても燃えても、公に大災害をもたらすことがあります。飛散すれば人を下敷きにすることだって考えられるし、燃えたら地域に火災がひろがるでしょう。
だから、安全を考える際は、公と私をごちゃまぜにせず、精度の高い議論をしなければならないのです。

PVをはじめとする建設の世界には、私と公の分別が出来ない人がまだあります。
住宅だからとか、大平原の一軒家だからこの程度でいいだろう、という感覚がその典型かもしれません。”私”の所有物だからまぁまぁで良いという主張です。しかし、主人の死後、あるいは存命中にだって、それが不動産として取引される可能性がある以上、これは”公”に属します。今の持ち主は私人かもしれませんが、建築物やPVは個人の寿命を超えて耐久しうる以上、そうした緊張感を持って作られないとならないのです。

そしてこうした地道な取り組みが社会ストックを生む。
サスティナブルってヤツです。
そこまでやれて初めて、環境に優しい太陽光発電なんて大層な言い方ができるんじゃないでしょうか。前も話したかもしれませんが、太陽光発電そのものが環境に優しいんじゃないんです。我々は環境に優しい太陽光発電システムを作らないとならないのです。そしてそれがどのようなものかというと、ある一定の事故リスク下にとどめることによってそれを長持ちさせ、機器生涯に多くの生産量=電気を得るってことです。

寄り道が長くなりましたが、品質のところに戻ります。
PVをエネルギー源として真に有効なものとするには、これまで話したように長持ちしちゃんと発電しなければなりません。。

僕ばっかりがシャウトしていても説得力がないので、海外に目を向けます。
海外の連中はどの程度真面目にやってるのかな、と。
全ての外力とか電気のことを考えると、読む人が大変なので風荷重のことだけで話題を進めます。

Eurocode-1が二年前に発効したので、特に1-4に関する欧州の動向がずっと気になっていたのですが、ちょうどPI誌に架台に関する記事がありました。これは日本で言う荷重指針に相当しますが、向こうではPVにも適用しているのかしらん。と。
するとどうもPVにも使っているようですね。ある地域では外力が小さくなったが、ある地域では架台コストが3倍にもなった、と。そういえばドイツに遊びに行くと、金具にテュフの認証シールが貼ってあったりもする。Kyrillへの反省もあったんでしょうか。

再び日本のこと。平成12年の大改正からブツは変わってません。FEM解析とかやってみたんですけど、むしろ以前よりチープになっています。金具もヘタクソなカンチレバーのままです。感心しません。市販の架台梁も、計算してみるとダメなのが結構、ある。
これって世界に冠たる日本の風工学の進展を誰も現場に生かしてないってことじゃないですか。平成12年のが最早旧すぎるのかと疑って海外文献を読み漁ったこともあります。それこそASCEとかBSとかAS/NZSとか、論文も片っ端から。すると、最新のASCEほどの運用性はないものの、日本の告示は相当に出来が良かったのです。でも、日本の太陽光発電業界は、こうした日本の財産を生かしていない。

階層が深くなりました。フォルダ階層を上に登ります。
品質とか設計とか、そういうことを標語なんかじゃなしに、きちんと実行しようとすると、上述のような風計算みたいな面倒ないちいちをやれる人が必要になってくる。
ところが、やれる人、即ちインテグレータは殆ど居ない。

しかし漫然と嘆いていても仕方ありません。
何故、わが国にはインテグレータが出てこないんだろう。
そう考えるようになりました。
すると最初の話になるんです。わが国のマーケット状況では、設計の予算なんてまるで無いんです。ゼネコンが本格参入しない理由がよく分かります。
コストダウンの追及も結構ですが、コスト一辺倒では、必ずシステムインテグレーション技術の空白期がやってきます。必要なモノゴトをサボることになります。人を育てるカネも時間も無いのですから。必要な本すらも買えない。販売店の書棚を見て御覧なさい。売上げ伝票くらいしかないじゃないですか。
そして、こんな割に合わない仕事を、これからの若い人がやってくれるでしょうか?

業界関係者は、キャンペーン用語を振り回すだけではなく、もっと具体性のある、精度の高い議論をして欲しい。風圧力のことは風圧力のこと。連系点のことは連系点のこと。逆潮流のことは逆潮流のこと。一々の既存技術とそれを扱う各々の立場をきちんと掘り下げ、教育活動なり法整備なりの社会基盤を作る意気込みが必要なのです。
後者は、こういうことです。
建築によって生じた日陰一つ守れないことでどうするんですか。
電圧上昇問題のユーザーすら守れないことでどうするんですか。
ファクターは出揃ってきたのだから、もはや、研究よりも法律の方を見直す議論が必要でしょう。

で、ここでは前者の方をメインに書いてきたわけですが、
若い技術者をこれからどうやって育てるか。
その前に、彼らが食ってゆける業界環境にしなければならない。
これが今の太陽光発電業界の最大の課題です。
普及だ普及だと騒いで見せたって、それは政治がうまくいけばまだ何とか成ります。

一方、人を育てるには時間が必要です。

既存業者側も、この苦しい時期をもう少し耐えないと。
食えないからと言って、卸販売(PVの事業展開の中で一番ましな収益性)ばっかりに執心するのでは、事業者の個別問題解消に過ぎません。
なんとか食いつなぐだけ、という空しい営み。。。

先日、とある外国の太陽光発電事業者が僕の元に遊びに来ました。
彼は、「あちこち見学に行ったのだけど」と言い、こう続ける。

日本の多くの販売店は、工事を外注に出して屋根の下で口開けて眺めているばかりだけど、どうしてお客さんは怒らないのか?

がっくりきました。
このままで良いはずが無い。決して無い。
現状を把握して、手を打ちましょう。
滅法に動いても何にもよくならない。怪しげなものをばら撒くだけになってしまいます。

3月 25, 2008 問題提起 |

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