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2008.06.02

保守点検はやはり必要だ②

先日の、産総研の加藤和彦先生の朝日新聞のオピニオン欄が気になっておりました。
http://homepage2.nifty.com/domi/jigyougaiyou/c20080515ASAHI.pdf

太陽光発電を取り巻く諸問題、事情は簡単にはまとめ切れません。
大変重要な問題提起だったのにも関わらず、あれでは紙面が足なかったのではないかと感じてきました。
それでご多忙のところ無理を申しまして、加藤先生に「本当の私の視点」を書いていただきました。早速、ここに掲載させていただきます。


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本当の「私の視点」-加藤和彦

     太陽光発電システムの「品質」

昨今、食品や建築構造物、再生紙などの工業製品の品質問題が社会を賑わせています。このような状況の中で、私は自分が研究対象としている太陽光発電システムの品質について、改めて問い直しています。一般に太陽光発電システムには環境に優しいという選好的なイメージがあり、それは技術論としては間違ってはいないでしょう。しかし、太陽光発電システムの工業製品としての品質は、それとは区別して議論されなければなりません。

一般社会において、太陽光発電システムの品質とはどのように考えられているのでしょうか。おそらく「発電効率」と思っている国民が多いのではないかと思うのですが、実はそうではありません。たとえば、ここにともに発電容量4kWの太陽光発電システムがあったとしましょう。価格は同じで、一つは発電効率20%のパネル、他方は効率10%のパネルを採用したものです。さて、皆さんはどちらを購入しますか。大多数の方が発電効率20%のパネルの方を選ぶでしょう。しかし、実際はどちらも4kWの発電容量ですから、基本的には同じ日射条件では同じだけの電力しか生み出しません。発電効率の良否は4kW分のパネルの面積に影響するだけです。

国土の狭隘なわが国では、今後とも住宅分野への太陽光発電システムの普及が鍵となりますので、そのユーザとなる国民一人一人の理解が大変重要です。これは比較的規模が大きく事業として導入されることが多い風力発電などとは本質的に異なる太陽光発電システムの特徴の一つです。したがって、太陽光発電システムの品質は、国民の観点から議論されなければなりません。太陽光発電システムが国民に提供しなくてはならないのは、それが生涯に生み出すクリーンな発電電力です。したがって、過酷な屋外環境下でいかに長期的な性能を維持できるかということが、より重要な太陽光発電システムの品質なのです。

     太陽光発電システムの保守点検の現状

しかし、現実の太陽光発電システムは、これまでの一般家電製品にはないいくつかの特徴をもった工業製品であるために、ユーザ自身が太陽光発電システムの「品質」の良否を判断することができない技術なのです。

まず、第一に太陽電池パネルが屋根上というユーザの視野外にあり、運転中は無音・無可動であるということ、第二に発電電力が気象条件に応じて時々刻々と変化すること、第三に同一製品であっても設置地域や設置姿勢、陰となる周辺障害物の有無などによって発電量が異なること、そして、最後に運転に際してユーザが操作をするということがほとんどないこと、です。

実際に、約4年前に当所に設置された太陽光発電システムでは、およそ5600枚の太陽電池パネルのうちの100枚以上、211台のパワーコンディショナのうちの約20台がすでに交換されており、今なおその数は徐々に増加しつつあります。また、昨年には一部のシステムの業者点検が実施されましたが、パネル・パワーコンディショナとも故障なしとの点検結果でした。しかし、点検されたシステムの中には、私が別に行った調査で数枚のパネルが故障していることがわかりました。点検業者は業界が推奨する保守点検ガイドラインに則って実施したのでしょうが、極めてお粗末なレベルと言わざるを得ません。

結局のところ、太陽光発電システムについてはメンテナンスの必要性が十分に認知されておらず、法的な義務付けもないことから、定期的な保守点検の実施は徹底されていません。また、現行のガイドラインに示されている点検項目も、故障の有無を積極的に見つけるには不十分な水準であり、技術者の意識・知識、装備も不足しているのです。

太陽光発電システムも人間のつくる工業製品であるからには保守は不可避です。ましてや過酷な屋外環境下で20年以上の運用や期待されているのです。現場での性能把握が難しいからといって、行政も業界もそれを避けてはいないだろうか。

     PVRessQ!

ここまでに述べたような問題意識から、私は2年ほど前から太陽光発電システムの耐久性や故障診断方法の研究を始め、その基本情報を得るために太陽光発電システムの実性能調査を実施しています。そしてこの活動が太陽光発電システムの信頼性・安全性・持続可能性の向上に役立つことを祈って「PVRessQ!(PV-Reliable, Safe and Sustainable Quality!)」というニックネームをつけています。メンテナンスフリーを標榜して普及を進めてきたこともあってでしょうか、残念ながら、政府、業界、そして私の研究所にも理解してもらえず、また、ただのボランティア活動だと曲解している者までおり、公的な研究予算はありませんが、まさに「捨てる神あれば拾う神あり」とはこのこと、この研究活動に賛同してくれた多くのユーザからの寄付金に支えられ、わずかずつではありますが故障事例が蓄積されてきました。その多くは保障期間内のパネルであり、ユーザさんに驚かれる場合もしばしばです。これからも地道に調査を継続し、実用的な故障診断方法とそれを支える社会システムを提案していきたいと考えています。

     太陽光発電システムは産業政策ではなく環境・エネルギー政策

最近の国際統計では、わが国が占めていた太陽光発電システム普及量世界第一位の座を独に奪われ、また、太陽電池の生産量第一位も日本から独の企業に取って代わられたようです。これは日本の新規産業振興政策の観点では由々しき問題でしょう。しかし、エネルギー技術政策の観点で私がもっと心配しているのは、太陽電池という工業製品の生産や普及に関する統計がある程度整備されているのに対して、国内に導入された太陽光発電システムから得られたクリーンな発電電力量に関する統計が全く未整備で、これまで国民の血税によって研究開発と普及を進めてきた太陽光発電システムからの発電量を誰も正確に把握していないということです。とうとう今年から京都議定書の第一約束期間が始まってしまいましたが、導入された太陽光発電システムによる温室効果ガス抑制効果をどうやって算定するのでしょうか。それとも、はじめから無視する気なのでしょうか。

     太陽光発電システムの研究開発行政に求められる方向転換

太陽光発電システム普及の黎明期には、研究開発と普及政策とが機関車となって社会を牽引してきましたが、いまその機関車はおよそ40万というユーザを客車に乗せてさらなる未来へ向かっています。にもかかわらず、いまだに飛躍的な効率向上を目指した太陽電池の研究開発ばかりに莫大な税金が投入されています。やや極論かもしれませんが、いまや太陽電池の研究開発は民間主体で進めてもらってよいのではないかと思います。効率が高く安価な太陽電池を開発することがそのまま民間企業としての利益に繋がるわけですから。これからは高額な太陽光発電システムを購入する国民が、その効用を安心して謳歌するための品質向上のための取り組みにこそ税金を投入するべきでしょう。それはつまり、太陽光発電システムの列車の乗客が快適にその旅を楽しんでいるかを最後尾で心配してくれる車掌の役割です。しかし、残念ですが今の列車にはその車掌は同乗していません。私の目下の目標は、PVRessQ!が早くその役割を果たせるようになることなのです。

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先生ありがとうござました。
太陽光発電にはPVRessQ!の車掌車が欠かせません。
大事なのは、設置したあとの”答えあわせ”です。
ユーザーのみなさんも、飽きずに発電データの記録をとり続けてくださいね。
診断をするには前歴に関する記録が大切です。

しかし、何よりその前に、評価(診断)の技術開発をしなければなりません。
その技術開発の先頭に立つのが産総研の加藤さんです。

6月 2, 2008 太陽光発電のニュース |

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コメント

あらためて加藤先生の論文を読み直しました。
結局、ユーザーや国のにとってはYieldが一番大切なんですよね、。デバイス開発は民間主導というのも賛成です。

システムとしてどううごくかはあくまでユーザーと業者の意思、情熱、技術力にゆだねられていると思います。

投稿: よしどみ | 2008/06/07 1:51:59

>ユーザーのみなさんも、飽きずに発電データの記録をとり続けてくださいね。
>診断をするには前歴に関する記録が大切です。

そのくらい内部のメモリに保存するシステムが作られていないんでしょうか?

投稿: yuya | 2008/07/29 13:08:09

パワコンに内部メモリはありますし、エラー履歴も呼び出せます。
しかし、実際の故障モードはこれを超えて多種です。またエラー履歴があってもエラー原因に究明には情報が不足しています。そもそもこの業界では、量産&低コスト化という大目標がありますから、市販品の自動検出装置の規模は最小限に留まっています。

投稿: よしどみ | 2008/07/29 23:45:10

太陽光発電システムは点検が必要だ

投稿: | 2009/04/22 15:44:19

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