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2009.04.28

転倒は笑いごとか?

台湾紀行の続きです。
私は彼らにアレイ転倒の事例を数例お見せしました。
話しながら、私は彼等の失笑に気付きました。
(日本の業者は)そんなものも検討していないのか、と。
私を世話して下さった方は数学者なので余計にそう思われたようです。
あれはミニマムも満たしていないではないか」と。
力学も知らない人が工事をしているのか」と。

インテリが多かったためか、そんな感想が普通でした。
しかしこれは本当に笑いごとでしょうか。
理屈の話をします。
要件:Mr>Mw
ここに、
Mw:(風による転倒モーメント)
Mr:(抵抗モーメント)
理屈としては簡単です。
ただのニュートン力学です。

じゃ、実際にやってみてごらんなさい。
頭で理解出来ていても、実際に代入すべきパラメータを集め、計算するとあっと言う間に一週間二週間と過ぎてゆきます。
是非、あなた自身がやってみてください。

何が大変か。
構造と言うものはアナログ回路設計と同じで、多数パラメータの一部を仮に埋めて計算、取捨選択、最適解への収斂させないとならないのです。
いくつものシナリオを立て、実際にCADを動かし、質量情報を集め、重心を解き、幾つものシナリオについて,実計算しないとならないのです。

事故例を目にして笑ってしまうのは、日本人も全く同じです。
しかし笑ってはなりません。

この検討期間、ユーザーはお金をくれますか?
呉れないでしょう。
ユーザーは、構造など、具体的に考えたこともないからです。
飛ばなければ良い。
ここには希望的観測だけがあります。
業者もそう。

だから大抵の業者は無設計を選ぶのです。
多くの事業者がサボる理由をちゃんと考えないとなりません。
実際、俺だけは大丈夫だという事業者が事故をやるのです。


本当は、このほかにもδ、σ、τを考えないとなりませんよね?
つまり、かなりめんどくさい。
大抵は最初にδでひっかかるでしょう。
その前に陸屋根設置ならば、M-resistanceでひっかかるでしょう。
しかもこのパラメータ、確保するのにいちいち大きな工事費がかかる。

だから日本メーカーは質量基礎を認めたくないのです。
儲からないうえに責任は重いからです。めんどくさいからです。

普及促進に当たっての問題点は、技術者不足です。
太陽電池コストは、もう十分に安い。最大でもたかが総コストの4割以下。
太陽電池が安くなれば・・・という幻想が主流としてまかり通っていますが、実は太陽電池の低コスト化による効果は、最大でもそれっぽっちなのです。
実市場において、総コストに占める太陽電池コストの割合がたったの一割もない場面が多いことは、もっと知られてしかるべきでしょう。

販売者は既に過剰。
工事人も、意外に居る。足りる。
実は、お客さん(ユーザー候補)もいっぱい居る。
一方で設計者、技術マネジメントをする人が全然足りません。

請負師や商社~工事人の間に足りないのは何か。
請負師や商社は鵜飼になりたがっている。工事人は鵜になりたがる。
それを職能とか、分限というと美しいでしょう。

しかし、職能とは汚いもので、自分の能力を超えること、分限を超えたことは、知らないと張り通す。
かくして、無責任がまかり通る現実がある。

その社会的影響度を我々は知らないとなりません。

元請けがこういったから、と言って、誤った設計の工事を請け負う業者を私は軽蔑します。モラル、モラールが育つのはいつの日でしょうか。
人のせいにして、世間のせいにして、それで仕事が成るものでしょうか。

戦うべきは、自分の小さな世間でしょう。
あなたの小さな世間はしばしば、強要します。
あの人がそう言ういのだから、と。

アホか!
自分自身で、試行し錯誤し、結論を求めなさい。

それから、ユーザー候補に言いたいことがあります。
安くしたいというのは、ほどほどにすべきです。
ただそれだけでは、誰もあなたのために働かないでしょう。
それほどの余裕はないのがこの業界です。

たったの一度でも良いから、システムの最初から最後まで、自分自身で検討してみてください。業者もユーザーも。
色々と分かると思いますよ。

4月 28, 2009 問題提起 | | コメント (0) | トラックバック (0)

台湾の光電・半導体設備産業協会で話してきました。

今更ながらの報告です。
先先週、協会に請われて台湾で話してきました。
お誘いくださった段階では、勘違いじゃないかと思いました。
日本でのシステムへの無関心、そして彼の国の輸出一辺倒とも思われる業界状況を思うと、システム専門の私の話など、興味があるわけがありません。

私が出来るのは、Design for PVsystemですよ、本当に合ってますか?
通訳の女性とそんなやり取りをしたが、彼女はそれで良いという。

半信半疑ながら準備をし、飛行機に乗り、会場に行き、4h話しました。
内容は、太陽電池設計の失敗例と構造設計の失敗例です。
そしてその分析です。
若い国、若い事業者には失敗例が一番有用だと考えたからです。
具体例を絞り込み、逆バイアスと発熱、アレイ転倒を主題としました。
前者はデバイス効率主義のもたらす弊害として、後者は無設計の結果として話しました。

驚くなかれ、大変な反響でした。
質問も鋭いものばかりです。
1.アレイ後端にかかる風圧力はどのように転倒モーメントに換算するべきか。
2.薄膜太陽電池のPEバイアスはどのようにすべきか。
3.ジャンクションボックスのポッティングは必要か否か。
4.耐積雪荷重は何Paにするのが理想的か。
5.レギュレーションにおけるミニマムデザインはどの程度の供用期間を意味する?

わたしの精一杯の答えは次の通り。
1.オーバーターンヒンジと背面重心の差をLとせよ。簡単のため真ん中で良い。また充実率を考慮せよ。
2.積層の順序による。NREL論文や雑誌を参照せよ。
3.少なくとも検査には邪魔。どうあるべきかまでは踏み込めない。
4.量産ラインを高品質化したら国際競争に太刀打ちできない。
むしろインストール環境毎に小ロット高品質品を製造する小規模メーカーが現れることを期待する。
5.10~15年と思われる。(私の経験では)そのモジューリング設計がおかしいかどうかは5年で目視可能なほどになる。

これらは私自身長年悩み、実験し、答えを得ているものです。
少し深くPVをやっていれば、誰もが同じことに悩むのですね。

聞くと台湾は数年以内に内国普及を加速させるという。
だから、ああも一生懸命だったのか。

日本は大丈夫ですか。
普及促進の旗振りばかりで、なかなか良い議論になりません。
どう設置するか、後々のリスクをどのように最小化するか、ミニマムデザインはどうあるべきか。リスクとは何か、国土計画との整合は?
そういった議論の場が我が国に育たないことに焦りを感じます。

この場を借りて、レジュメ翻訳と講演通訳に奮闘してくださった林琪華さん、そしてお招き下さった協会の方に深く感謝申し上げます。

4月 28, 2009 開発・具体的な取り組み | | コメント (0) | トラックバック (0)