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2010.12.01

太陽光でどうやって食べてゆくのか

毎週のように人と出会う。
とかく、その、出会う人からは相談が多い。
彼らは、ある何かでつまづいていて、それを突破したいわけだ。

その中で気づいたのが、自分のこと。
僕は一体、どうやってこの仕事で食べてきたのかしらん、と。
食うや食わずやの15年くらいがあったけど、いつしか食えている。
食ってゆけることにはきっと何か理由があるわけだ。
太陽光もまた、お客さんあっての仕事だから、きっと何かを求められて、その何かに応えているに違いない。

こんな当たり前すぎることが分かったのは、自分がお金を払って他人に仕事をお願いするようになってからのこと。
で、その、求め求められるものの内容だが、これまたなんと大きな背景か!!
良く考えてみれば、仕事開始以前のことがとても多い。
★商取引をするのだから伝票処理なんぞはサクサクやれるのが当たり前。
★WEBとEmailは楽しみながらやれるくらいでないと取引相手に負担をかけるだけ。
★最低でも二次元CADの操作、あるいはしっかりしたアイソメポンチ絵が書けないと意思疎通不可能。
★英語や中国語が少しくらい読めないと関連技術資料が全然わからないはず。
★上手くなくても良いからエクセル、ワード、パワポ操作。ファイルコンバージョン環境。
★法令や法令の精神に明るいこと(法令無知を簡単に考える人は商取引どころか国民の資格なし)
★タイプライターのブラインドタッチは必須(出来ないと、自分が大変でしょ)
★人好き、酒好き
★貧乏にくじけない!!
このあたりが完備していることがスタート地点ではなかろうか。
結構これだけでも、一定以上厳しい社会人経験を経ていないと手に負えない。
うーむ、実は僕達おじさんおばさん達の世界って凄いかも。

で、その上で、プラス3本の実務分野保持が太陽光仕事人のミニマム仕様であ~る。
学歴組には、語学がペラペラだったり、自然科学的な考察でモノゴトの本質を見抜く力を持っている人があったりしてそれはもう、凄い戦力と見えるのだけれど、実務が何ができないと結局何もできなかったりする。

太陽光の場合、以下の異種3本のそれぞれ少なくとも一本ずつ持っていて欲しい。

カテゴリー1(机上技術or技能)
●アナログ回路が少しは書ける。
●構造計算(材料力学)が少しは出来る。
●通り芯図が書ける、板金展開が出来る。
●SpiceやFEMが少しは使える。
●コンピュータ言語が何かひとつは出来る。
●盤図またはシーケンス図が少しは書ける。
●化学、電気化学が博士クラス。
●正確なな統計処理が出来る。

カテゴリー2(現場技能)
●制御盤を組める。
●躯体の鉄骨を組める。
●最低限の低圧電気工事が出来る。(高圧や特高は分野違い)
●ザイルさばきと足場組立の両方が出来る。
●ヘリやクレーンや船舶、輸送手段の性能を理解し誘導が出来る。
●全種類の屋根工事が(技能的に)出来る。

カテゴリー3(法務と安全技術)
●国際規格・・・例えばIECやJISの全体観を持っている。
●国内の電気法令網や建築基準法の体系が見えている。
●太陽光関連の事故モードをよく知っている。

太陽光は、浅く広くがいっぱい。
意外にハードルが高い。
伝票流しの次のステップに到達できる人は、あまりにも少ない。
このことが商社過剰、顧客過剰という不思議なミスマッチを招いている。
裏を返すと、それくらいマトモな仕事人は不足しているってこと。
これから太陽光に参入する人は、せめて上の実務3本に取り組んでみてください。
各カテゴリ、それぞれ一本ずつを持っていれば、間違いなく重宝がられ、お客さんのほうが寄ってきます。
売り込みの前に自分のほうを磨きましょうや。
全部のうち、たった一本では話になりませんよ。
それぞれ、一本ずつ持っている上での合計3本ですから。
しかも、それが最低ライン。

実務分野の話をすると、純正ホワイトカラー組は特にいけない。
誰もが、部下にやらせるという。外注にやらせるという。
しかし自分が出来ないことを人に頼んでも絶対にうまくいかない。
うまくいっているように見えても、それは法令すらも守れない脆弱な経営環境にある。

因みに
●補助金やら国内外の情勢などマーケット情報収集は、さして重要ではない。
それは人に聞けばわかるし、Webに膨大な英文情報があるから。
●商談の得手不得手は全然重要ではない。
そもそも、無理をしてまで取ってくるお客はロクなものではない。
彼らはしばしばコストダウンの名目の中で法律違反すら強要する。
もちろん、このような状況はしばしば顧客側の無知が原因であって、
きちんと説明してあげれば状況が変わることもあるのだけれど、
大抵は、彼らの懐具合を盾に正論が拒まれる。
こういう時に、無理に契約に持ち込むほどの営業力はロクなものではない。
会社を、組織を、悪い方に陥れるだけだ。
●アイディア
アイディアは実はアイディア単体では公害。
法令網への深い造詣や科学的な判断能力のいずれかを持っている人が提案しないとその中身はAvailableではない。
知財関係者に迷惑をかけるばかりか、社会全体にも害が大きい。
こういうのを”思いつき”と呼ぶ。
”思いつき”は実は、思いつきをした人以上に多くの人に既に検証されている。
多くの発案は、実は既知事項である。
自称アイディアマンは、無益あるいは有害な事柄を何やら大仰なこととして周囲を振り回していることに気づいていない。
彼らの無知はもう少し戒められなければならないだろう。
むしろ、公知にする正義があれば彼らは倫理的に救われるに違いない。
中身のおかしさを叩かれもするだろうが。
●資格
資格もあまり関係ない。資格者はゴマンと居る。
実際にそれをやれること(be able to)のほうが重要。
そもそも免許は総花過ぎ。
大事なのは、その場面に必要なことをちゃんとやれること。
免許が要件である場合も、実力者よりも免許者のほうが多い現実がある。
この部分こそ、最悪時は外注すればよろしい。
紙切れだけでは仕事にならないのだよ。
●工事技能単体
これは一番ツライ。アタシャ、設計内容について責任が無いよ、といっているようなもの。
無知とそこから派生する下請け根性は、は材料の横流しと並んで一番タチが悪い。
彼らは知らず公害を撒き散らす。
バブル崩壊後、社会はずっとこのような態度に寛容だが、これは正しいことではない。

ともあれ、太陽光の仕事にカラクリなんて無いと思う。
地道にやるしかないし、地道にやった人じゃないと、部下や外注に指示できない。
ドイツはどうだ、アメリカはどうだという大きな話をするのは簡単だ。
だけど、実施するのはそれとは比べものにならないくらい手間がかかるし難しいということ。

業界にはもっとクールダウンして欲しい。

また、新卒の連中も、怪しげなハウツーものに惑わされず、モノゴトの実質に取り組むことに注力してもらいたい。

あれが売れる、これが成功するといった情報が今一番くだらない情報に違いない。
そのことに気付いて欲しい。

ハウツー情報だけでシステムを一本納められるか?
考えるまでもないだろう。
太陽光発電システムは、とどのつまり汗かき、手を動かしの仕事そのもの。
情報マニアや証明マニアに出る幕は無いのだ。
そのことは市場の実態が良く証明している。

認証というのもひとつのトラップであって、ある枠組みに適合していることを証明するに過ぎない。
これは、多くの人が陥りやすい点。
認証システムそのものに欠陥があれば、何もかもが素通り。
スイスチーズモデルというのをご存知だろうか?
監査者がAもBもCも見落とせばそれまで。
チーズの巣は重なりうる。
権威や資格というのはその程度のものだ。
そもそもが不十分であれば全ては簡単にひっくり返る。
必要なのは、裏付けのある、技術的注意深さだ。

ならば、経験はどうか?
経験は人の一生のうちで限られた知見に過ぎない。
10年と1年とはちょっとしか違わない。
あなたがユーザーであれば、そのくらいに考えておくのが良いだろう。
結局、見過ごすものはずっと見過ごすのだ。
見えないものは存在しないも同じ。
「臭いものにはフタ」とも言うでしょう。

市場で勝つ、という直截的な思いよりも
見えない他者を思い、見えない日本の未来を思うことのほうが僕は価値があるし成功すると思う。
食えるかどうかというのも一時的な問題。
せめて真実について誠実でないと、仕事というのは、成り立たないらしい。
こういう感想は、それこそ僕の、たった20年の小さな経験の賜物。
それも、長い人類の歴史にはかないますまい。

12月 1, 2010 私の話 |

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