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2011.03.16

ヘリ待機者の心得

今回の災害を観て思ったのは、ヘリ誘導とヘリ待機について一般人に広く知ってもらう必要です。そうしなければ救助者の負担が大きくなりすぎ、他の被災者救助の余裕が減ってしまうからです。ヘリレスキューを7年間やっていた経験から、被救助者側の心得について簡単に書いておきます。

<ヘリ搭乗者の心得>
●補助員が降下してくれる場合
補助員が降下してくれる場合は、その人の指示に従います。ただし、すべての人が基本的な心得を持っておくことが必要です。
●臨時ヘリポートの作り方
周囲に樹木等障害物のない広い場所、風況の良い高所を選び、Hマークを明示します。
●飛散物対策
ロータによって飛散物が発生します。飛散しやすいものを予め一箇所にかき集めて石などの重しを載せておきます。
●待機者の集合
パイロットはテールロータやメインロータによって人を傷つけることを恐れています。したがって待機者は一箇所に集合します。また、ヘリは風下からアプローチしますから、風上を背にして待機します。斜面では高い側を避け、低い側に集まります。
●機体乗降時の心得
メインロータによる事故防止のために低い姿勢で待機します。
テールロータ側には決して回ってはなりません。
飛散防止のため、帽子やハンカチは、予めポケットやザックに仕舞います。
また、着衣のジッパー、ボタンは予め止めておきます。さもなくば姿勢を崩したりなど様々な問題を起こします。
●ホイスト
ハーネス装着状態、カラビナのゲート確認を徹底します。
スキッドと体のからみに注意。ぶらぶらした紐状のモノは予め外しておきます。
●パイロットやヘリ搭乗員と無線が通じる場合
・風速、風向、視界、周辺状況を伝える。
・受信メリット(1~5)を伝える。
・要件は1件ずつ。相手の番を明示する。「何々を、こうせよ。どうぞ」
(いっぺんに言うと互いにワケが分からなくなる)
・複数の要件がある場合は、用件数を最初に宣言する。
・復唱を徹底。「何々の件、了解」
・衛星電話の使い方も上記と同じ!!(テレビを見ているとアナウンサー達が衛星電話や無線機に慣れていないことがよくわかる)

へり誘導の方法は業種によって微妙に異なりますから、誘導者向けの話は省略します。

※話は違いますが、学会や講演で2つも3つもいっぺんに質問をする人を見ます。あれは非常に良くない。
意思疎通を確実にしてゆくためには、
質問者(依頼者):これはどうだ?どうぞ。
回答者(受託者):これはこうだ。どうぞ。
質問者(依頼者):これはこうだの件、了解。
このように丁寧にこなすのが有効。

3/19追記
レスキューの現場を見て他にも色々と思った。

<荷物の扱い>
物資不足に際して荷物がヘリやら船から運ばれる。この時の荷物の扱いがもう少し訓練されていればな、と感じた。それどころではない、という感情論も出てこようが、そういうところに話を納めてはならない。ああいうのは、要領が悪いと不必要にくたびれるからだ。物資は大抵の場合、ダンボール箱に納められてやってくる。ダンボール箱というのはこれまた扱いが悪い。例えば、人から人への手渡しにおいては手から滑り落ちてしまうことが多い。半分屈んだ状態でトラックの荷台の奥に荷物を詰め込んでいると腰を痛めてしまう。
実はああいうのは、テクニックとして解決できる部分が大きい。ダンボール箱のバケツリレー的手渡しでは、向こうとこちらの交互に並ぶと良い。受け取るときは胸に、差し出すときは相手の胸に押し付ける。搬送距離を見て、何人を配置するのが良いか、指導者があると良い。トラックの奥への荷物搬入は膝をつくなど姿勢を安定させた上で荷物を滑らせると良い。狭い場合は、荷物の角を利用して「歩かせ」る。こういうことを体で知っていないと体力任せになる。実際100kg/個くらいから難しくなる。荷物を歩かせるということを知っていれば、4人程度で数百キロのモノを動かせることがある。
もちろんソロバンといった搬送道具があると良いのだが、あの状況ではそこまでは気が回らないだろうし数が無い。だからこういうことはハードウェア頼みシステムとして頭の交通整理をしてはならないだろう。それで私は、どうして荷物のハンドリングがああなるのか、に興味を持った。こういう当たり前のテクニックが自然発生的に出てこないのは、社会が高度に分業化されてしまったからか。
また、ダンボールという流通も考えらせられた。流通というのは、ビジネスであり効率を追求しているからフォークリフトでのハンドリング性とトラックへの収納性、容器としての扱いの良さに心血が注がれる。そうすると人間が扱いやすいものではなくなるようだ。
はい作業ということもしみじみ考えた。経験の無いボランティアをほったらかしにしていると荷物のまとめ方がメチャメチャになる。ダンボールや米袋、セメント袋というものはよく出来ていて卍に組めばよく積み上がる。これも広く知られていなければ、分かる者だけがくたびれてしまうに違いない。

<”もっこ”とセンターワイヤー>
荷物のヘリ搬送の際、ヘリが地上に着地していたらヘリ部隊の方がこれまた忙しい。ああいう救難場面こそ、センターワイヤー方式で行くべきだ。空もっこのピックアップが出来る人が地上に居れば、どれだけ救援効率があがることだろう。それが居ないから、自衛隊員にあれほどの負担がかかるんだろうけど。
建設業はクレーンを使うからもっこの扱いがある。建設業に従事する人は日本中にゴマンとあるので被災地においても活躍の期待が高い。しかし、彼らの中ではもっこを畳まないことが習慣化している。だからヘリ運送にあのままの仕事術を適用するとテールローターにもっこが絡まってしまう。そういう心配もあって、航空法の規制などもあって着地しているのか。では、日頃から建設業のほうが丁寧であれば、パイロットは建設業出身者を地上員として信頼しただろうか。実はこれはこれで精神論として難しい。一緒に酒を呑んだこともないような者にパイロットはもっこを預けるだろうか。そういう疑問が出てくる。なにしろパイロットには自分と乗員の命がかかっているのだ。しかしこの難題に丁寧に向き合わないと、今回のような面的災害が再び発生した際に、今回と同様、たちまち救助側リソースが不足してしまうだろう。

<・・・>
救助者の心得はもちろん大事で、これはよく研究されもしているが、今後は「救助される側」についてもっと語られていても良い気がする。上に書いたような、両者の切れ目をつなげる工夫が今後の防災にあって欲しい。

3月 16, 2011 |

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