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2012.04.25

光害

日経記事から
”横浜地方裁判所は2012年4月18日付の判決で、横浜市内の戸建て住宅の建て主と住宅会社に対し、住宅の屋根から太陽光発電パネルの一部を撤去し、原告である隣家の住民2人に計22万円を損害賠償として支払うよう命じた。建て主のAさんの依頼で住宅会社のタマホーム(東京都港区)が屋根に載せた太陽光発電パネルの反射光は、原告にとっては受忍限度を超えるまぶしさがあると認定した。”

第一,太陽電池の光害は昔から知られていたものである.少なくとも私は,10年以上前から太陽電池メーカーとさんざ議論をしたし,彼らはこれまで技術資料を作り公開するのはもちろんのこと,(未だ完全ではないものの)対策品開発の努力をしてきた.つまり,本訴訟の被告は,太陽電池業界として元々わかりきっている公害への対策を怠ったのだから719条認定されるのは当然.

また,この訴訟に関して,北面設置自体を経済的ではないとして被告の設計方針自体を疑う声もあるが,実は,この考え方は間違いである.
まず,PVの北面設置が珍しいことではないことを知っておく必要がある.南だけでは出力が足りないとき独立電源では北面設置をしてきた歴史があるし,系統連系でも経済性能だけではなく環境WTP視点でそうする人もある.まして今みたいに売電価格が上昇してPVシステムの買い手にとっての経済性期待が高まってくると,業者や買い手が北面に設置したくなるのは当然.だから,北面に設置することは好き好きであり,歴史もあり,異常なことではない.そして北面設置を検討するときの設計者は,他者への思いやりをもって技術検証をしなければならない.検証の結果,他者に迷惑をかけることが明らかであれば,業者とメーカーとシステムの買い手は,北面設置を止めなければならない.

加えて重要なのは,上述北面設置の意味を理解しない人々の持つ論点のズレが引き起こす問題である.北面設置の意味を理解しない人々は,社会に対して以下の悪影響を与える.
1.北面設置の是非と元の問題である光害の問題とをすり替えてしまうこと
2.この無意識的な問題すり替えが,原告のような立場にある人のお気持ちへの理解を妨げること
3.問題のすり替えが,PV業界の反省を遅らせてしまうこと

こうした問題を繰り返さないためには,PVメーカーと販売会社は,PVの買い手に対し,予め十分な情報を与えないとならない.今回の場合,被告人側のPVオーナーも傷ついていると思う.ちゃんと情報公開し,説明していれば原告も被告PVオーナーも傷つかなかったと思う.

原告の方には,私たちの太陽光発電業界のだらしなさを,お詫び申し上げたい.
また,もしも,被告PVオーナーが予めこの問題を業者やメーカーから知らされていなかったのであれば,訴訟を受けて立つ気にもなろう.なにせ,買う前は「知らなかった」からだ.そうだとしたら,これも業界の不徳の致す所である.その場合,このPVオーナーにも業界人の一人としてお詫び申し上げたい.
更に言えば,ひょっとしたら被告のタマホームも被害者かもしれない.光害を予測するにはベクター図が必要.しかし,一般に,太陽電池メーカーや架台メーカーの多くは,海賊版を恐れてか,業者にベクター図面を発行しない.今回の件でも太陽電池メーカーがタマホームにベクター図面を発行していなかったのだとすれば,タマホームは光害シミュレーションをする方法が無い.その場合,本当の加害者はベクター図を発行しなかった太陽電池メーカーなのだといえる.ベクター図なしの場合,現物を購入して形状測定してコンピュータシミュレータで机上実験するか,実実験をすることによってしか光害が読めないからだ.

訴訟を起こされた原告の勇気と裁判長の公正さに拍手を送りたい.そして,もしお会いできるものであれば,原告の問題提起に感謝申し上げたい.

太陽光発電は問題が山積みである.ひとつひとつ解決してゆかなければならない.被害者の訴えによって始めて本気で動くのはようではまるでダメである.
今後のPV業界のあり方が問われているのである.

4月 25, 2012 太陽光発電のニュース |

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コメント

よしどみさんご無沙汰しております。
PVパネル光害について教えてください。
PVパネルは乱反射抑制していないのでしょうか?  乱反射対策すると放熱問題に直面するとか技術的な何らかの支障がでるのでしょうか? 

都会では光害問題まで発生するんですね、当地域のPV工事関係は、その存在すら認識していない可能性高いと思います。

余談ですが、テレビのブラウン管などでは外来光を吸収する膜を露光塗布していたと記憶していますが・・・

投稿: kk | 2012/04/27 3:16:05

kkさん,ご無沙汰しております!!
まず,光る場所は,ガラスとフレームがあります.
○ガラス
ガラスの内側は,発電を増やすため微細なテクスチャを用いて光閉じ込めをしています.しかし外側はやりません.ゴミが付くのと,扱いにくくなるという二つの問題があるからです.ゴミについては分かりやすいですよね.テクスチャの間にゴミが詰まります.そこでやむなくテクスチャガラスとする場合は,大きなテクスチャにします.
ところが,今度は,扱いにくくなるのです.この点がちょっと分かりにくいかもしれません.この大柄テクスチャは,手袋や靴が滑ります.これが運搬・施工時や点検時に危なくて仕方ないのです.
この危険は二つの観点で整理できます.
一つ目が,作業安全上の問題です.表面が手袋や靴を受け付けなくなると,作業者が体を支えることが一切出来なくなります.我々は,よろめいたとき,とっさに手を突いたり足で支えますよね.その支える先がツルツルであると,作業関係者がひどく危険な目に遭います.例えば事務机の天板程度のものでも素手や手袋を受け付けないと,手を付いた途端,大転倒となりますよね.まして屋根という危険な場所です.だから表面平滑にして滑らないようにすることが大事に成ってきます.もちろん,マイクロクラックによるIphインバランスを防止するためにも発電面に乗ったり手を付いたりしないのが原則ですが,よろめいたときに手や足が付くのは仕方ないことです.このように原則と結果については分けて考えないとならないと思います.
もう一つが,電気安全上の問題です.表面が手袋を受け付けなくなると運搬者は,裏側に手を添えるようになります.そうなると裏側に傷を付けやすくなって,その傷が地絡やセルマイクロクラックの原因にもなります.なお,作業手順や道具の工夫でこの問題を乗り越えようとするのは悪手です.何しろハンドリングするサイトが悪すぎます.トラックからの荷降ろしという”道路”,施工する場所が”屋根”というサイト都合の問題です.だから作業者に追加的作業や努力を求めるのは間違いでしょう.
というわけで,私は,作業関係者保護,モジュール保護の観点から表面平滑なガラス(光害が出る従来型)を使うのが望ましいと考えています.

○フレーム
モジュールのフレームもよく反射します.明色アルマイトにすれば温度上昇しにくいので発電的には良いのですがそうはいきません.作業時に眩しくて危ないのです.そこで,住宅用太陽電池では暗色アルマイトのヘアーライン仕上げとするものが大多数です.なお,商法としては,外観を美しく!!という表現を用いて,悪い点(温度上昇によりVが低下する)を良い点(シックな外観)として評価するのが通例となっていますけれども,フレーム色に関するこの説明に限っては,悪いことではなく,良い方便だと思います.何故ならばこの方便を使わなければ少なからぬ人々(買い手)が,発電量増量の目的から明色を求めます.その結果は,作業者に負担を掛けたり,光害を激しくすることにつながるからです.昔と違って,今は買い手が消費者になってしまったから,タチが悪いんですよね.幾ら説明しても他人に迷惑を掛けることを気にしない人が居るので,業界はこういう方便を使うしかないのでしょう.

PVは技術的商品なので,トレードオフを理解しない人をどう扱うかがいつも問題になります.
1.買い手を,よく話を聞いて自分で考え自分で決断することが出来る技術者に限定する.2.十把ひとからげに規制する(上の場合は方便型規制)
3.一切誰にも売らない(政治的解決)
あまりマトモな対策がありません.

また,蛇足ですが北面設置の際の技術検討量は非常に多いです.太陽電池の発電面は中央にタワミが出ます.自重とアスペクト比からそうなるのです.つまり,フラットではないので,反射方向にある”幅”を考えないとなりません.

しかし何より,問題を意識してこなかったことが問題ですね.もともと独立型で場所が足りないからやる,というのが,少なくとも私たちにとっての”北面設置”でした.住宅密集地域や観光地では,気軽に北面設置するわけにはいきません.

投稿: よしどみ | 2012/04/28 9:30:10

懇切丁寧に説明していただき有難うございます。
設置の作業性にまで関係していたんでね、全く知りませんでした。

技術的な解決策はあっても経済性や人間とか景観などに優しくなかったりするんですね
PVの世界も奥が深いですね

投稿: kk | 2012/04/28 10:58:07

ほんと,PVの世界は奥深いです.
そもそも,技術屋が技術的側面からのみ考えたことは,100%失敗しますね.
どんな技術も,本当は,社会的要求,道徳的要求が先にありき,でなければならないと思います.
それが逆転するからしばしば変なことになるのでしょう.

投稿: よしどみ | 2012/04/28 11:14:22

吉富さん、こんにちは。
太陽電池の北面設置は、2000年以前によく目にしていましたが、ここ数年前から始まった余剰電力買取価格が高くなってからよく目にするようになりました。2000年以前の設置事例では、PVユーザーが環境や電力の自給率のためなど自ら望んで設置していましたが最近の設置事例は、建築会社が販売時に押し売りしているように感じます。建売分譲住宅で「6kw標準搭載」などと言って販売促進用に設置しているのではないでしょうか?以前にもありましたが、最近は設備容量が増加傾向にあります。当然南面の屋根のみで設置出来ずに北面にも太陽電池アレイが設置されることになるでしょう。最近見かけた建売分譲住宅は6~8件の小さな団地すべてに北面設置されていました。この住宅を購入したユーザーは、自分が望んだわけでもないのに近所から苦情を言われることとなり、別の意味で被害者となってしまいます。
また、投資目的で北面にも設置するユーザーも現れるでしょう。(もう現れている)
私も吉富さんが言うように他者に迷惑をかけなければ、北面設置は大いに結構であると考えます。
太陽光発電光害シュミレーションなるものが、PV業者に普及することが必要かもしれません。それを考えなければ、北面設置禁止論が常識になってくるのでしょうか?対策が必要ですね。
私の家に設置された東、南西方向に設置された太陽電池も私が知らないだけで、ある季節に他人の家の窓を照らしているのかもしれないと考えてしまいます。
私も業者として、ユーザーに北面設置について伝えていかなければならないでしょう。

投稿: キタガワ | 2012/05/02 14:21:25

キタガワさん,こんにちは.
なるほど,それがすべてでないにせよ,建築会社のセールストークもあるわけですね.光害シミュレータは,使いやすいのは欧米の製品.(日本のは大抵の場合,値段が高くて使いにくい)何とかしないとならないですね.
北面設置禁止論は,量産メーカーが言い出しそうなことです.自分にも他者にも迷惑を掛けなければ何をやっても構わないわけですが,この区別に手間がかかるとなると十把ひとからげげな対策を採りたがる人が増えるでしょう.横着というものです.
東西面についても同感です.実は起こっているんだけれども,ご近所のよしみでまぁいいかと許してあげている人が多いと感じます.
キタガワさんが業者としてユーザーに北面設置の意味について伝えようとするように,とかく,売り手は買い手に対してそのリスクをきちんと言わないとなりません.第一,良いことばかりなどという夢の技術はありえません.だから構造崩壊問題も,107V問題も,光害問題も,ホットスポット問題も,起こりうることは全部言ったほうが良いと思います.その上で技術とカネで解決が付く問題は,さっさと投資してもらう.技術とカネでは解決が付かない問題は,リスクに巻き込まれる恐れがあるご近所の人の了承を得ることも大事になってきます.建築もそうやって前に進んできたのだから,PVも同様であるべきでしょう.

投稿: よしどみ | 2012/05/02 15:38:41

購入意欲のあるユーザーに電圧上昇抑制、ホットスポット、日陰、将来の廃棄処分、屋根材復旧の話をすると、半日掛かりでのどをからしての大仕事です。その割には、そんな大変なことならやらない、というユーザーがほとんどです。意味がわからない人は、営業の上手い業者(良いことだけ説明する業者?)から購入する場合もありますが。これらの話は、こちらも説明しやすい分、ユーザーにも理解できますが光害は、説明、理解が難しそうですね。実際にいつ、誰に、どの程度被害をかけるのかこちらもわからないと、説明すらできない。勉強する必要、有ですね。
私は、田舎に住んでいるので多少光害があっても、許されていたのかもしれませんが、今後太陽光発電が普及するにつれて、田舎でも我慢できないような光害が発生するかもしれません。
また、この業界の業者は、他県で販売、施工をすることが非常に多いので、自分の住んでいない場所での販売、施工には特に注意する必要があります。

投稿: キタガワ | 2012/05/02 18:23:45

点検維持費用もそうだし,廃棄費用もそうだし,言ってないことばかりですよね.実に怪しい業界です.のどを枯らしての大仕事は,当分は売り手側専門家の義務と考えます.何しろ買い手は知らないのだから,共通認識が出来るまで売り手側が我慢するより仕方ありません.もちろん買い手側も,口を開けて待っているばかりではなくもっと勉強しなければなりません.
でもそもそも,メーカー・業者ともに,PVシステムの全体像を知る人が少なすぎます.設計も工事も,他人任せにする人々ばかりです.
更に問題の上流を遡ると,情報が体系化されていない現状があります.本や論文を書くのが大変すぎることもあって情報整理は,放置プレイ状態です.技術の普及よりもモノの普及が先走ってしまった格好です.いつか誰かが”まとめ”をしなければならないわけですが,著者が足りないのでナンパ活動に励んでおります.(特に,工学関連法学と材力と電気・電子の執筆者が全然足りない)

買い手が「そんなに大変ならばやらない」という時,それを売上げ減少の問題として売り手が認識する現状もヤバイです.本当のことを言うと売れないといっても,いつか本当のことがバレてゆくのだから,先に行動したほうが良いはず.そもそも,言わないことは,”裏切り”だということを忘れてはならないでしょう.買い手からの復讐に遭うからいけないんじゃありません.倫理的にいけないことだからいけないのです.しかし,このご時勢,こういうフツーのことが中々通じにくいです.

ともあれ僕は,業界に向かっては「先手を打とうぜ」と講演で提唱しています.しかし,多くの人がこれまでと態度を変えるのを,困難と感じているようです.物理法則と同じで,事業方針や人心にも慣性の法則(=要するに惰性だ!)があるようです.メーカーと業者は余りにも腰が重く不誠実です.いよいよ名指しで突っ込みを入れるしかないのかな.少なくとも法令違反は今後,こまめに告発してゆく予定です.

他府県での事業展開は,それそのものがいけないのではなく,あくまで”経験主義に染まる”ことが拙いのです.地域ごとに異なる環境条件を理解し,普通に注意していれば問題ないでしょう.でもその”普通の注意”が意外に難しいんですよね.何しろ技術的範囲が広いですから.

光害は,こういった業界全体の問題の表れだと思います.つまり,ほんのちょっと尻尾が出ただけ.まだまだ出てきますよ!!

投稿: よしどみ | 2012/05/02 20:06:54

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